借金がなくなる!?消滅時効について
皆さん「時効」ときいて何を思い浮かべますか?
私は司法書士事務所に勤めるまでは、時効と聞いて思い浮かべていたのは
「悪いことしても長いこと逃げ切ったら無罪になるやつでしょ」
でした。
今ではこの「長いこと逃げ切ったら無罪になる」というのも、
殺人罪などで死刑に当たる場合の公訴時効は廃止されましたね。
しかし、司法書士事務所に勤めている人間が時効と聞いて真っ先に思い浮かべるのが「借金」です。
お金を貸した方も借りた方も長いことその借金を放置していたら
時効によってその借金が消滅します。
最近お問合せが増えてきた借金の消滅時効についてご紹介します。
※このコラムは決して借金の放置を推奨するものではありません。当たり前のルールとして、借りたお金は返さなければならないという基本的な認識を忘れないでくださいね。
時効ってなんだろう
まず、お金の貸し借りがあると、貸した人に債権という権利が発生します。
「お金返せ!」という権利です。
この権利は、一般的には最後の返済時から5年で消滅時効にかかります。
じゃあ一体時効って何なんだろう?というと、
「長い間続いた事実状態を尊重し、その状態が法律的に正当でなくとも、これを正当な法律状態とみとめること」
といった感じです。
借金の話に置き換えると、
「長い間借金を返済も催促もしなかった事実を尊重して、返済しないことは法律的によくないことだけれども、初めから借金はなかったことにしましょう」
と言う感じでしょうか。
え?なんか納得いかんわ。
お金を借りたのに返さなくていいの?
と思われる方もいらっしゃると思います。
何だか不公平な気もしますよね。
なぜ時効という制度が存在するのでしょうか?
時効が存在する意義
時効が存在する意義はいくつかあります。
・法律関係の安定を図る
・長期間継続した事実の方が真実に合致する可能性が高い
・権利の上に眠る者は保護に値しない
例えば、自分の祖父が大昔に借金をしてた。
長いこと放置されていたので、もちろん自分もその借金の存在すら知らない。
すると突然「昔お前のじいちゃんに金貸してたんだ!金返せ!!」と債権者らしき人が借用書を持って現れた。
これが認められると怖いですよね。
そこで、祖父が大昔にお金を借りていたかもしれないということよりも、
長年催促や返済もなかった事実(借金がない状況)の方が真実の可能性が高いし、
ずっと催促してこなかった方にも問題があるよね。
じゃあこの債権は消滅時効が完成しているとして、なかったことにしょう。
というのが時効の考え方です。
時効の援用
では、時効が成立すると自動的に借金は消滅するのかというと、違います。
時効によって借金を消滅させてほしい人は、「時効の援用」をする必要があります。
債権者に対して「これは時効なのでお金は返しません!」と宣言するのです。
なぜこんな制度があるかと言うと、
世の中には時効をよしとしない人がいるからです。
自分が借りたお金なんだから、きちんと返したい!
他人の土地を勝手に使っておいて自分のものにするなんてよくないことだ!
と時効を望まない人に時効完成をおしつけるのはよくないですよね。
なので、時効を望む人だけ時効の援用をしましょう。となっているのです。
時効援用の方法
時効の援用は、一般的に内容証明郵便で時効の援用通知を送ります。
これで債権者が時効を認めれば晴れて借金は消滅します。
しかし、時効には「時効の更新」という制度があり、
一定年数経過していても時効が完成していないことがあります。
どんな場合に時効の更新によって時効が完成しないのでしょうか。
時効の更新とは
時効の更新事由は大きく3つあります。
①裁判上の請求等
②強制執行等
③債務の承認
今回は債務整理のご相談でよくいただく
①裁判上の請求等と③債務の承認について。
①裁判上の請求等
裁判上の請求とは、「金返せ!」と裁判をされて判決を取られることです。
判決を取られると、ずっと続いていた時効期間がリセットされます。
なので、例えば4年11か月の間、返済も督促もなく時効の完成が迫っていたとしても、
裁判をされて判決を取られると、この4年11か月はリセットされて、0からスタートになります。
そして判決を取られた後の時効期間は10年に延びるので、
次は10年経たないと時効は完成しません。
裁判上の請求でもう1つよく耳にするのが「支払督促」です。
この支払督促も裁判上の手続きにより「仮執行宣言付支払督促」が確定すると、
判決と同様に、消滅時効がリセットされ、そこからの消滅時効には10年の月日が必要です。
③債務の承認
消滅時効が完成しているかしていないかでよく問題になるのがこの「債務の承認」です。
債務の承認とは、
借金してることを認めるような行為をすることで、
これをすると、効期間がリセットされます。
返済をしていなくても、借金の存在を認めるような言動があったなら、消滅させる必要ないよねってことです。
では、どんな言動がこの債務の承認をしたことになるのでしょうか?
返済
金額問わず、一部や少額のみの返済や利息のみ返済をした場合も
債務の承認にあたり、時効がリセットされます。
返済猶予の申出
債権者「金返せ!!」
債務者「もう少しまってください。。」←これが返済猶予の申出にあたり、時効がリセットされます。
減額交渉
債権者「金返せ!!」
債務者「ちょっと安くならいですか?」
これも債務の承認として時効がリセットされます。
無言
債権者「金返せ!!」
債務者「・・・・・。」
これは一見、異議を述べなかったので承認したことになるのでは?と思われるかもしれませんが、
古い判例でも、承認にはならないとされています。
なので時効はリセットされません。
とぼける
債権者「金返せ!!」
債務者「何のことか分かりません」
これも債務の承認には当たらないでしょう。
債務の承認は、本人にあまり自覚がなくてもしてしまっていることは割とあります。
このように時効の更新事由があると、
時効の援用をしても借金はなくなりません。
今回は借金の時効についてご紹介しました。
冒頭でも述べたように、決して借金を放置することを推奨するものではありませんが、
法律上認められた権利として時効の援用という手段もあります。
この他にも借金問題を解決する手段はいくつかあります。
借金問題でお困りの方は一度ふくおか司法書士法人にお問合せください。
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