コラムColumn

表題部所有者の氏名しか登記されていない土地の売買はどうする?

2022.10.12

もうすぐハロウィンですね。
日本にハロウィン文化が定着したといっていいのでしょうか。
私は未だにハロウィン行事に参加するのってちょっと照れくさい気がしてしまいます。

さて、今日は結構レア登記の依頼をいただき無事完了したのでご紹介します。
何がレアって
①所有権保存登記されていない土地
②表題部所有者の住所が登記されていない

この2点が結構珍しいのかなと思いました。
では1つずつ見ていきます。

所有権保存登記がされていない「土地」

「土地」というのがポイントです。
まず、日本には「土地」と「建物」それぞれ別々に登記されます。
1筆1筆の土地にそれぞれ登記が作られるし
1棟1棟の建物にもそれぞれ登記が作られます。
そして保存登記というのは、初めてその不動産の権利の登記を入れるときに使われます。
例えば新築で家を建てて初めて入れる権利の登記が「所有権保存登記」です。
新築建物は今でもどんどん建てられているので建物の所有権保存登記は当たり前に行われています。

では、土地の所有権保存登記とはどいういうことでしょうか。
土地は建物と違って、新しく作られるということはありませんよね。
私たちが生まれる前から、そこにある土地は日本国土としてずっとそこにあるのです。
なので、殆どの土地は所有権保存登記がされています。
しかし、ごく稀に所有権保存登記がされていない土地があります。
この土地を売買したい場合どうするのかというと、まずは所有権保存登記をしてから
所有権移転登記をしましょうね。というルールになっています。

所有権保存登記をする理由

所有権保存登記は最初に行われる権利の登記というだけあって、
所有権保存登記をしていないと「この土地は自分のものだ!」と第三者に主張することができません。
ということは、第三者から見ると本当に所有者かどうか分からない状況なのです。
本当に所有者かどうか分からない人から不動産を購入したくないですよね。
もし購入したとしても所有権移転登記をしてもらうこともできません。

こういった理由から、まずはその不動産を初めて取得した人は
所有権保存登記をして、きちんと自分のものだということを第三者に主張できる状態にしておく必要があるのです。

よし、では土地の所有権保存登記をしようではないか。
と思ったら表題部所有者に住所の登記がされていませんでした。
この場合、どういった対応が必要でしょうか。

表題部所有者の住所が登記されていない

まず、表題部所有者とは!?ですが、
ネットで調べるとこんな風に表現されてることが多いようです。
「登記記録のうち、土地・建物に関する物理的状況を表示した表示登記が記載されている部分のこと。」

所有権保存登記などの権利の登記に対して
表題部所有者は「所有者」とはなっているものの、
正式に所有権を主張できる者ではないということです。
とりあえず物理的に存在したこの不動産に所有者の欄を設けて登記しておこう。といった感じでしょうか。
そしてこの表題部所有者は一般的には住所と氏名が登記されます。
しかしこれもごくま稀に住所が登記されていないことがあります。
住所が登記されていないと何が問題なのでしょうか。

表題部所有者の住所が登記されていないと何が困る?

結論からお伝えすると、表題部所有者がどこの誰だか分からないから困るのです。

例えば、この土地を購入したいと思った場合、
現在の所有者と売買契約を交わして、所有権移転登記をすることで
第三者にも主張できる所有権を手に入れることができます。

冒頭で少しお伝えしましたが、登記の順番はこんな感じです。
①表示登記:物理的に存在している不動産のとりあえずの所有者として表題部所有者が登記される
②所有権保存登記:その不動産の最初の真の所有者が登記される
③所有権移転登記;所有権保存登記されている人から所有権を取得した人が登記される

③をするためには、まず②の所有権保存登記が必要です。
この所有権保存登記は、誰でもできるわけではなく、
①で登記された表題部所有者本人や、相続人、直接譲り受けた人のみが所有権保存登記ができます。
しかし「この土地がほしい」と思っても、①の表題部所有者がどこの誰だか分からなければ、
譲ってもらうことができないですよね。
住所が登記されていれば専門家によって住民票や戸籍などを取得して調査できますが、
それすらできない状況になってしまいます。

なので、表題部所有者の住所が登記されていないと困ってしまうのです。
では、この場合どういった対応になるのでしょうか。

不在者財産管理人を選任する

今回のように表題部所有者の氏名のみ登記されている場合の対応について
平成30年7月24日付法務省民二第279号の通知がされました。

この通知によると、表題部所有者の不在者財産管理人の選任申立をして、
選任された不在者財産管理人と売買契約が成立した場合には、名前のみの所有権保存登記が可能とのことです。
(通知の内容は国による嘱託登記の可否についてされていますが、これに倣って、国による嘱託登記でない場合も可能)

因みに、不在者財産管理人とは

不在者財産管理人とは、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に、
家庭裁判所が申し立てにより不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するために選任される者のことです。

事例

表題部所有者:ふくおか太郎(住所の登記なし行方不明)
土地購入希望者:さが次郎
不在者財産管理人:くまもと五郎

この場合、まず、
①さが次郎が申立人となりふくおか太郎の不在者財産管理人の選任申立をする
②選任された不在者財産管理人であるくまもと五郎が権限外の許可を得て、さが次郎と売買契約を結ぶ
③すると、くまもと五郎の申請によってふくおか太郎の名前のみで所有権保存登記ができる
④そして、ふくおか太郎⇒さが次郎への所有権移転登記ができる

こうすることによって、
表題部所有者の住所が登記されていない土地の売買をすることができます。

不動産登記といってもいろんなパターンがあります。
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