コラムColumn

判決を取得して単独で休眠担保権を抹消する方法 

2021.04.01

 休眠担保権とは

休眠担保権、とう言葉を知っていますか?

司法書士業務をしていても年に数回目にするかどうか、、、というほど珍しいものではありますが、

完済しているかも不明、抵当者(債権者)も不明、という状態で長年にわたり放置されている抵当などの担保権のことです。

「売ろうと思って不動産屋さんに相談にいったら担保が付いていて売れないと言われた」

「相続した不動産に古い抵当権が付いていることを司法書士に指摘された」

というような事情で発覚することが多いです。

 

古いものは大正や明治だったりするので、債権額は数十円や数百円であることもあります。

 

  休眠担保権があったらどうしたらいい?

休眠担保権は、既に債権としては消滅しているものが多いです。

では、抹消登記ができるのか?というとスムーズには進みません。

登記申請は権利者・義務者の共同で申請する必要があるけれど、そもそも抵当権者が分からないから共同申請できない、という理由です。

抵当権者が個人だとしても死亡している場合がほとんどだし、会社だったら名前が変わってたり、既に解散しているという可能性が高いです。

その場合、抵当権者が個人であれば相続人調査、法人であれば閉鎖登記簿を取得して清算人を調査します。

かなり以前の抵当権の場合、相続人が膨大な人数であったり、清算人の表記では本人が特定できない場合があります。

相続人が膨大な人数であろうと、全員と連絡がとれて抵当権抹消手続きにご協力頂ければ問題ありません。

かなり大変な作業にはなりますが、その方法で手続きが完了することもあります。

 判決を取得して単独で休眠担保権を抹消する方法

当事務所では最近、昭和42年に設定された休眠担保権を判決を取得して抹消しました。

【事例】

依頼者 所有者A

抵当権者 B

債務者  C

抵当権が設定された当時の所有者 D

債権金額 金80万円

 

この事例では、AさんはB・C・Dさんとは親族でもなく他人、BCDさんは親族、という関係で、本来であれば抵当権者Bさんの抵当権を消してからAさんに所有権移転すべきところ、

何らかの事情で抵当権が消されないままDさんからAさんに売買を原因として所有権が移転されていました。

 

Bさんは既に死亡していて、相続人は20名もいました。

 

相談者

Eさん(Aさんの相続人)

 

  事例検討

今回は、

相続人数が多いことと、海外在住の相続人もいるので相続人全員の協力が必要な共同申請は困難(権利証もない場合、相続人全員の印鑑証明書も必要です)

債権額も比較的高額で現在までの利息・損害金を含めるとかなり高額になる

ことを考慮し、

抵当権設定登記抹消登記手続請求を提訴し、判決による単独申請を進めることとしました。

 

 訴状起案。司法書士と裁判所の見解の違い

裁判に当たって求める裁判の結論に相当する「請求の趣旨」、その理由に相当する部分を「 請求原因」といいます。

請求の趣旨について、当事務所は

  被告らは原告に対し、別紙物件目録記載の土地について、○法務局受付番号○番の抵当権設定登記を、昭和○年○月○日消滅時効を原因とする抹消登記手続きをせよ。

としましたが、判決では

  被告らは原告に対し、別紙物件目録記載の土地について、○法務局受付番号○番の抵当権設定登記の抹消登記手続きをせよ。

 

となりました。

 

どこが違うかお気づきになりますでしょうか?

当事務所が主張した請求の趣旨には原因日付がありますが、判決書には原因日付がありません。

これはそもそも、請求原因が違うのです。

 

当事務所では、消滅時効による債権の消滅を原因としていますが、判決では、所有権に基づく妨害排除請求としての物権的請求権が認められたことになります。

弁護士が起案した訴状であれば当然に判決書のような請求原因になっていたのかもしれません。

しかし、我々司法書士のゴールはあくまで、勝訴判決を得ることではなく、抵当権抹消登記を完了すること、です。

 

   登記申請には登記原因と原因日付が必要

登記申請には、どのような原因で、いつ生じたのか、を明確にするため、登記原因と原因日付が必要です。

そのため、司法書士は登記手続きの為の訴訟を行う場合、まずは登記原因と登記日付を明確にすることを重要視します。

しかし、訴訟のプロである弁護士の先生が取得した判決書には登記原因が掛かれておらず、登記をする段階になって依頼を受けた司法書士が頭を抱えることがあります。

判決だけでなく、和解調書などでも単独申請が出来ますが、その表記方法によっては法務局で申請が受理されない場合もあるのです。

その場合、裁判所に対し更正決定を依頼し、主文の表記を変更してもらう、という対応をすることもあります。
しかし,実際には裁判所はその更正決定をしてくれないこともあります。確かに、登記面では問題があっても、判決内容には問題がない場合がほどんどだからです。

  
  判決に原因日付が無い場合の登記申請方法

判決を受け取ったときは、正直「やってくれたな、、、」と思いました。

確かに、物権的請求権であれば、「原告が所有している」・「抵当権が設定されている」という2つの事実の証明だけで認容が可能です。

それらは不動産の登記事項証明書によって証明することが可能であるので、そちらの方が裁判官的には認めやすい、という事情があると思います。

しかし、今回は公示送達もなく、全員に訴状が送達されたので、欠席裁判による自白でも良かったのでは?

と思いますが、、真意は未だに分かりません

 

結局、登記申請では、事前に法務局の登記官と打合せをしたのち、令和○年○月○日判決 として登記申請を行い、無事に登記が完了しました。

登記官には、「自分で訴状を作ったのなら、なぜ登記原因日付が入る時効消滅にしなかったのか!?」

と聞かれました。 事の経緯を説明し、登記官も私も (;´д`)トホホ。。。 ということで上記解決策が認められた次第です。

 

 

 

 

 

 

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