相続登記と債務整理
相続登記には、申請期限がありません。
ですので、土地や建物に対し相続が発生していても、名義変更がされずにそのままになっていることも多くあります。
しかし、長期間放っておくと、次の相続が発生して相続人の数が増え、遺産分割協議が難しくなる場合もあります。
相続が発生したら、相続登記は早めに行って下さい。相続が発生したら、まずご相談下さい。
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これは登記部門でよくご案内する内容です。
この中に「相続が発生したら、まずご相談ください。」とございますね。
ここでいう「相続が発生したら」というのはどういう状態のことを指すかご存知ですか?
【相続は、死亡によつて開始する。(民法882条)】
つまり「相続」自体は被相続人が死亡したときから発生し、相続人に相続財産の権利義務関係が移行することになります。
遺産分割のお手続きや名義変更などの手続きをしているかどうかは関係なく、被相続人の死亡の時から相続は発生するのです。
これを踏まえまして、債務整理のお話しです。
無料相談のなかで、債務整理の方針、特に法的整理(個人再生・自己破産)を検討する場合に
お客様にお聞きする項目の中にこのような質問があります。
「遺産相続等未了の財産はありませんか?」「近い身内でお亡くなりになっている方はいらっしゃいますか?」「ご実家の名義はどなたになっていますか?」などなど。
借金でお困りになりご相談に来られるお客様の多くは不動産などの財産をお持ちではありませんが、上記のように被相続人の死亡とともに相続人に財産が引き継がれるため、
ご本人が認識していない潜在的な財産をお持ちの場合があり、それが理由で借金整理が困難になるケースがあります。
よくあるパターンはこうです。
【多重債務に陥ったAさん。ご実家から離れた街で暮らしています。ご実家の土地建物を所有していたお父様は10年前にお亡くなりになっていますが、AさんもAさんのお母様も遺産分割や相続放棄といったお手続きを何もしていませんでした。そして、お母様はお父様がお亡くなりになったあともそのままご実家で今もお暮しになっています。】
この場合、お父様がお亡くなりになった時点で、法律上、ご実家の土地建物はお母様1/2、Aさんが1/2ずつの持分で相続されています。繰り返しになりますが実際に遺産分割の手続きをしたしないは関係ありません。
この状況で、Aさんが個人再生をしたとします。
ご実家の土地建物の評価額の1.3倍の1/2を清算価値に計上しなければなりません。評価額が高ければ、その分清算価値も高くなり、返済額が跳ね上がる可能性があります。金額によっては個人再生によっても返済が不可能かもしれません。例えば実家不動産の評価額が1000万円だった場合、Aさんは500万円の財産を持っているということになり個人再生をもってしても最低でも650万円は返済しないといけなくなってしまいます。
では、同じ例でAさんが自己破産をしたらどうなるでしょうか。
裁判所はAさんの持ち分1/2(500万円)を換価しようとします。債権者に分配しなければならないからです。土地建物は半分こにして住むというわけにはいきません。今も住んでいるお母様はどうなるでしょうか。おそらく裁判所はまずお母様に1/2相当分を買い取る(つまり500万円を支払う)ように言ってきます。もしくは不動産を売却させてその代金から500万円を納付させることもあり得ます。その場合住み続けるためには買主に相当の賃料を払わないといけなくなります。どっちにしてもお母様にとってはとんでもないことです。
かといって、直前にあわてて相続登記をして、ご実家はお母様のものとするのも(実際にAさんはもう何年もご実家には暮らしていないのです)問題があります。裁判所により取り消されたり、自己破産自体ができなくなったりする可能性があります。
いずれにしても、相続開始後に遺産分割などのお手続きを放置してしまいますと、あとあとが本当に面倒ですから、放置せずに、当社までご相談くださいませ。
わたしたちは皆様のお困りごとを解決する
福岡の司法書士事務所です。
ふくおか司法書士法人では、不動産登記、商業登記、債務整理、後見業務などに専門のスタッフを配置し、依頼者のためにふくおか司法書士法人で対応しうる限りの支えになることを心がけております。
また、より高い専門性を生み出すために弁護士、税理士、社会保険労務士等の他士業の先生方とも協力し合いながらワンストップで業務にあたっています。
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