遺産分割協議の成立・協議書への捺印後に相続人が死亡した場合の相続登記について

遺産分割協議の成立・協議書への捺印後に相続人が死亡した場合の相続登記について
「遺産分割協議」と聞くと相続人が一同に会して、一枚の遺産分割協議書を回して実印を押していく
というイメージがあるかもしれません。
しかし、実務の面では相続人が一同に会することはほとんどありません。
相続人全員で決めた内容を我々司法書士が協議書にまとめ、相続人の方それぞれにご捺印頂く、という方法を採ることが多く、お一人の相続に関し、相続人の数だけ遺産分割協議書があります。
そうなると、必然的に郵送先や返送に要する時間でタイムロスが生じることになります。
また、遺産分割協議自体はずっと前に終わってたけれど、協議書は作成していない、という場合もありますし、遺産分割協議書は全て整っているけれど、登記申請はしていなかった、という場合もあるでしょう。
では、登記申請前に相続人が亡くなってしまったら、どうなるのでしょうか?
遺産分割協議書作成後に死亡した場合
被相続人が甲さん、法定相続人が乙さん、丙さんで、遺産分割協議の結果乙さんが甲所有不動産を単独相続することになりました。
遺産分割協議書は既に作成済みで、登記申請が済まないうちに乙さんが亡くなりました。乙さんの相続人は配偶者であるAさんのみです。
問題点
①遺産分割協議書の効力は、相続人の死亡によって効力を失うか?
←効力は失われません。
②亡くなった人の印鑑証明書は取得できるか?
←死亡により住民票から除かれている場合、印鑑証明書は取得できません。
死亡した相続人の印鑑証明書がない場合には、「遺産分割協議書の作成が真正に行われたこと」を相続人全員が証明し、その書面に相続に全員の印鑑証明書を取得することによって
登記申請が可能です。
尚、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書には期限がありませんので、生前取得した印鑑証明書がある場合にはそちらを添付することが出来ます。
まとめ
遺産分割協議書作成後、登記申請前に相続人が死亡した場合、作成済みの遺産分割協議書を使って登記申請をすることが可能です。
亡くなった相続人の印鑑証明書があれば、それを添付し、なければ相続人からの証明書と相続人の印鑑証明書を代用します。
上記のケースでは、名義取得者が亡くなっていますので、相続人からの申請となります。
遺産分割協議書作成前に死亡した場合
被相続人が甲さん、法定相続人が乙さん、丙さんで、遺産分割協議の結果乙さんが甲所有不動産を単独相続することになりました。
遺産分割協議書作成前に丙さんが亡くなりました。丙さんの相続人は配偶者であるCさんと未成年者のDさんです。
問題点
①遺産分割協議書作成前に相続人が亡くなった場合、遺産分割協議は効力を失うか?
←効力は失いません。遺産分割協議書を作成していなくても一度成立した遺産分割協議は有効です。
②未成年者Dに特別代理人の選任は必要か?
←この場合、遺産分割協議はすでに終了しており、事実を証明するだけなので、Cさんと利益相反とはなりません。
よって、未成年者Dさんい特別代理人を選任する必要はありません。
まとめ
遺産分割協議が成立した後、協議書作成前に相続人が死亡したとしても遺産分割協議は有効です。
その場合、亡くなった相続人の相続人全員が「真正に遺産分割協議が成立したことの証明書」を作成して印鑑証明書を添付します。
上記のケースでは、乙さんが登記申請人となります。
相続登記についてご不明点がある場合には、ぜひ相続に強いふくおか司法書士法人にお尋ね下さい。
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