株式を譲渡すると登記申請は必要?
2024.01.31

張り切ってつけ始めた日記が1日で終わってしまいました。
夫から「三日坊主に謝れ」と厳しい意見をいただきました。
気持ちを新たに再開して今のところ3日間続いているので、
めでたく三日坊主は名乗れそうです。
さて、今回は株式譲渡と登記申請についてです。
たまに、「株式を譲渡したいので手続きをお願いしたいのですが」
というお問合せをいただきます。
株式を譲渡する場合にはどんな手続きが必要なのかまとめてみました。
株式を譲渡しても登記申請は不要!?
この事実を伝えると結構びっくりされることがあるのですが、
実は株式を譲渡しただけの場合は法務局への登記申請は不要です。
何故かというと、株式を保有している人の氏名は登記されていないからです。
登記されてないので変更しようがないということです。
詳しく見ていきます。
登記事項は決まっている
まず大前提として、会社を設立すると登記申請をします。
登記申請をすると、いわゆる会社の登記簿ができあがります。
で、実はこの登記簿に記載される内容は法律で決まってるんですよね。
決めたことが何でもかんでも記載されるというわけではないんです。
登記簿に記載される内容とされない内容をざっと挙げるとこんな感じです。
記載される内容
・商号
・本店
・会社の設立日
・目的
・発行可能株式総数
・発行済の株式総数
・資本金
・株式の譲渡制限に関する定め
・役員の氏名住所
・会社の機関に関する事項
記載されない内容
・株式を保有している人の氏名
・事業年度
・役員の任期
上記は、一般的に会社設立時に決めて定款に記載する内容です。
しかし、これらは会社の登記簿には記載されません。
この中で今回のコラムに関係しているのが「株式を保有している人の氏名」です。
株式を保有している人の氏名は登記事項ではない
例えば、株式会社ABCという会社があったとします。
取締役:A、B
代表取締役:A
株式保有者:C
この場合、登記簿に記載されるのは、
取締役:A、Bの氏名と
代表取締役:Aの氏名住所です。
登記簿のどこを探しても株式保有者Cの名前は出てこないんですね。
ではこの場合にCが保有している株式全てをAに譲渡しました。
変更登記は必要でしょうか?
そうです、登記されてないので変更も何もやりようがない、、ってかんじです。
なので、ただ単に誰かから誰かに株式を譲渡したというだけの場合は、法務局への登記申請は不要です。
だた、ここで1つ注意必要なのは、
新たに株式を発行した場合には登記申請が必要ということです。
新たに株式を発行した場合は登記が必要
例えば先程の株式会社ABCが新たに株式を発行して、
その株式をAが引き受けたとします。
この場合には、登記申請が必要なんですね。
「え?何がちがうん?」というと、注目したいのは
登記簿に記載される内容の列挙している
「発行済み株式総数」とか「資本金」です。
株式を【新たに】発行するということは、
株式会社ABCの発行する株式の総数が増えるということになります。
なのでこの場合は登記簿に記載されている内容が変更になるので、法務局へ変更登記申請が必要です。
そして一般的には資本金も増えることが考えられるので、ここも変更が必要になります。
じゃあ株式譲渡する場合、何もしなくていいの?
ここまでの話は、あくまで法務局に変更登記の申請が必要がどうか?という話です。
じゃあ申請が不要だからといって何もしなくていいの?
というと、そんなことはありません。
株式譲渡をするには?
株式を譲渡するのだから、「いいよ、あげるね」「やった、もらうね」
という口頭のやりとりだけというわけにはいきません。
そもそも会社の株式を譲渡するのに本人同士の意思表示だけでいいと思いますか?
何かまずい気がしますよね。
そうです、株式を譲渡するには然るべき機関で承認を得なければいけません。
株式譲渡の承認とは?
ここからは、お問い合わせいただくほぼ100%の割合を占める株式譲渡制限の規定を定めている会社でお話を進めていきます。
いきなり「株式譲渡制限の規定」というよく分からないワードが飛び出してきましたが、
これは簡単に説明すると「株式を勝手に譲渡できないように設定している会社」のことです。
殆どの会社が設定していると思います。
確認方法は登記簿の中に「株式の譲渡制限に関する規定」という欄がある場合は、
勝手に譲渡されないように設定しているということになります。
この場合は、この規定に従って手続きが必要になるのです。
登記簿に定めている機関で承認が必要
殆どの会社がこんな感じで規定していると思います。
・当会社の株式を譲渡により取得するには、【株主総会】の承認を要する
・当会社の株式を譲渡により取得するには、【取締役会】の承認を要する
【】の中が承認機関なので、この承認機関で「株式を譲渡していいよ」と承認を得なければ譲渡することはできません。
因みに、どのくらいの賛成で承認されるかというと
株主総会:発行株式の過半数を保有する株主が出席して、議決権の過半数の賛成で承認される(普通決議というやつです)
取締役会:出席取締役の過半数の賛成で承認される
※その他、会社の規模や定めによって必要な手続きが大きく変わってきます。具体的にお考えの場合は一度専門家にご相談ください。
承認機関の変更は可能
「げ、承認機関変更できないのかな、、」
という場合は、もちろん変更することができます。
承認機関は定款で定められているので、株主総会の特別決議によって変更が必要です。
特別決議なので、先程出てきた普通決議より要件は厳しめになります。
要件:議決権の過半数を有する株主が出席して、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で変更できる。
そしてこれは登記事項なので、変更した場合には登記申請が必要です。
まとめ
ちょっと話がそれたので、今回のコラムの結論を端的にまとめると
株式譲渡だけしても登記申請は不要
登記申請は不要だけど手続きは必要
⇒検討している方は専門家へご相談ください。
ということでした。
会社の登記のことはふくおか司法書士法人へお問合せください。
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