コラムColumn

株式会社の取締役の任期について

2022.03.31

株式会社を設立するとき、
定款で任期を定めることが一般的です。

任期は何年にしたらいいですか?というご質問をよくいただくので
迷われている方はこのコラムを参考にされてみてください。

株式会社の取締役員の任期

株式会社の取締役の任期は会社法で決められています。

表のとおり定款で変更可能なので、任期を2年以外にしたい場合は、
定款でその旨を定めます。

任期は長いほうがいい?短いほうがいい?

先に書いたとおり、非公開会社であれば
取締役の任期は10年までの期間で自由に定めることができます。
しかし「ご自由にどうぞ」と言わると迷うし、
そもそもの判断基準やメリットデメリットが分からないと決めることはできませんよね。

任期のメリット・デメリット

任期が短い場合と長い場合のメリットデメリットです。

まとめると、
1人で会社を立ち上げるなら10年にするメリットが大きい。
2人以上で会社を立ち上げるならメリットとデメリットを天秤にかけてよく検討した方がいい。

といった感じです。

2名以上で会社を始める場合のリスク

夫婦でペアローンを組むときの指南書に
「ペアローンを検討している方は離婚したときのことを考えて」
と書いてあったりします。

それと似ているのですが、
もし2名以上で会社を立ち上げようと考えている場合は
経営方針の不一致などでお別れしたくなったときのことを考える必要があります。

事例

例えば柳川くんと飯塚くんは2人で会社を設立しました。
柳川くんが年上でお金も持っていたので、資本金を全額出資し、
取締役に柳川くんと飯塚くんが就任しました。
そして2人で話し合って、
「任期を短くすると登記費用もかかるし手続きも面倒なので、
取締役の任期は10年にしよう」と決めました。
しかし1年ほど経ったころ、2人の経営方針は合わなくなり、
次第に柳川くんは飯塚くんのことを「会社にとって不利益になっているのではないか?」
と考えるようになりました。
そうなると思うことは1つ。
「あいつ辞めてほしいな」です。
そこで柳川くんは飯塚くんに「辞めてほしい」と伝えて
何度も話し合いを重ねましたがなかなか飯塚くんは納得しません。

こうなってしまった場合に
一般的に次に考える手段「解任する」です。
しかし解任にはリスクがあります。

解任のリスク

先ほどの事例の続きです。

事例

たまらず柳川くんは株主総会を開き、飯塚くんの解任決議をしました。
株主は柳川くんのみなので、無事飯塚くんを解任し、登記もしました。
めでたしめでたし。

と思っていたら、飯塚くんから
「この解任は不当である!任期満了までの役員報酬を支払え!」と損害賠償請求をされてしまいました。

 

損害賠償請求をされる可能性

会社法の会社法339条2項にはこんな風に書かれています。
株主総会の決議により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

たとえきちんと株主総会を開いて解任決議をとったとしても
「正当な理由なし」と判断された場合には、
解任されなければ在任中に得られたであろう役員報酬等を賠償せよと請求される可能性があります。
リスク高いですよね。
こういったことから、できれば解任で辞めていただくということはしたくないんです。

解任決議の要件

株式会社の取締役は、株主総会の決議で解任をすることができます。
決議の要件は以下の①と②をクリアしなければいけません。
①株主の議決権の過半数を有する株主が出席
②出席した株主の議決権の過半数の賛成

任期満了退任でリスク回避

任期を短く設定することで解任登記をせずに辞めてもらうということが可能になります。

事例

任期を10年にしていると取締役を選びなおす機会が10年に1度になってしまいます。
長いですよね、、
そのため任期満了を待てずに「解任」という手段を取らざるを得ないのです。
しかし任期を1年にしておけば、1年ごとに取締役を選びなおすことができるので
その機会に飯塚くんを取締役として選ばずにそのまま辞めてもらうことができます。
この方法は「解任」ではないので損害賠償のリスクを回避することができます。

では、一度定款で定めた任期は変更できないのでしょうか?

任期の変更

定款で定めた任期は
株主総会の特別決議で変更することができます。

定款変更決議の要件

定款で定めた任期は、株主総会の特別決議で変更することができます。
決議の要件は以下の①と②をクリアしなければいけません。
①株主総会で議決権を行使することができる株主が出席
②出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成

定款を変更する場合の要件は解任決議よりも厳しいです。
定款は会社のルールブックのような位置づけなので
ルールを変えるにはそれなりの要件をクリアしなければならないということです。

今回の事例だとこんな感じになります。

事例

柳川くんは解任のリスクを回避するため、考えました。
「そうか、定款変更して任期を1年にしたらすぐに任期満了で辞めてもらうことができるではないか」と。
そして株主は柳川くんだけなので
株主総会で定款変更の決議を行い、任期を1年に変更、
飯塚くんの任期満了による退任登記まで完了しました。
めでたしめでたし。

と思っていたら、飯塚くんから
「この定款変更は不当である!損害賠償請求だ!」と主張されました。

ふふふ、解任じゃないもんね。
と高を括っていた柳川くんでしたが、
こんな悲報が。

東京地裁平成27年6月29日判決・判例時報2274号113頁

取締役の任期短縮によって退任した在任取締役は、
会社法339条2項の規定の類推適用により、
任期短縮による退任に正当な理由がある場合を除いて、
株式会社に対して損害賠償を請求できる。

任期短縮した場合も解任した場合と同様、
正当な理由がなければ損害賠償請求できるよ。
ということです。

因みに、役員ごとに異なる任期とすることも可能です。
詳しくはこちらをご覧ください。

まとめ

会社を設立するとき、決めなければいけないことが沢山あります。
何となく決めてしまうと
今回紹介したようなトラブルにもなりかねません。

会社設立の際は是非専門家である
ふくおか司法書士法人までご相談ください。

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