抵当権付きの不動産と相続について
2025.04.01

債務者が亡くなった場合
不動産を購入する際にお金を借り、抵当権を設定することは一般的です。
では、その借入金を完済する前に債務者が亡くなってしまった場合、残りの債務はどうなるのでしょうか?
住宅ローンと団信(団体信用生命保険)
住宅ローンの場合、団体信用生命保険(団信)に加入していれば、 保険会社が金融機関に保険金を支払い、住宅ローンが完済されます。
その後、抵当権を抹消する手続きをすれば完了です。
しかし、住宅ローン以外の借入れや、団信に未加入の場合、 債務者が亡くなった後も債務はそのまま残ります。
相続による金銭債務の承継
債務には「可分債務」と「不可分債務」があります。
可分債務
可分債務とは、分割が可能な債務のことを指します。
例えば、金銭債務は分けることができるので、 債務者が亡くなると相続人が法定相続分に応じて承継します。
例として、もし100万円の借金を残して亡くなった場合、 相続人が2人であれば、それぞれ50万円ずつ引き継ぐことになります。
不可分債務
一方で、不可分債務とは分割ができない債務のことです。
例えば、自動車の引渡し義務などが該当します。 この場合、相続人が2人いても車を半分ずつ引き渡すことはできません。
金銭債務は可分債務
債務者が亡くなった際、金銭債務は可分債務のため、 相続人が法定相続分に応じて承継します。
例えば、債務者が100万円の借金を残し、 相続人が配偶者と子供2人の場合、それぞれの負担額は以下のようになります。
- 配偶者:50万円
- 子供(長男):25万円
- 子供(次男):25万円
可分債務は遺産分割協議の対象外
相続人の1人が「自分が全額負担する」と主張しても、 金銭債務は遺産分割協議の対象ではないため、 その意思を反映させることはできません。
ただし、債権者(金融機関)が了承すれば、 特定の相続人が債務を引き継ぐ形で遺産分割協議を行うことが可能です。
例えば、金融機関が「債務を長男が承継するなら合意する」とした場合、
相続人間で話し合いを行い、長男が債務を引き受ける遺産分割をすることができます。
債務者変更のための登記手続き
遺産分割の結果、特定の相続人が債務を引き継ぐ場合、 「相続による抵当権変更登記」を行います。
この登記は、金融機関との共同申請が必要で、 申請人は以下のようになります。
- 権利者:金融機関
- 義務者:不動産の所有者
必要書類
この登記申請は通常の相続登記とは異なり、 戸籍謄本や遺産分割協議書の提出は不要です。
また、債権者(金融機関)の承諾は必要ですが、 承諾書を提出する必要はありません。
代わりに、登記原因証明情報に以下の内容を記載します。
- 債務者が亡くなった年月日
- 相続人全員の合意により、特定の相続人が債務を承継した旨
- 金融機関の承諾を得た旨
加えて、不動産の所有者の権利証(登記識別情報)が必要となりますが、 印鑑証明書の提出は不要です。
法定相続登記が済んでいた場合
遺産分割協議を行う前に、 法定相続による抵当権変更登記をしていた場合でも、 その後に改めて遺産分割協議に基づく抵当権変更登記をすることができます。
この場合、「相続」ではなく「遺産分割」による抵当権変更登記となります。
まとめ
抵当権の変更登記を行う際は、 金融機関と連携を取りながら進めることが重要です。
ふくおか司法書士法人では、 金融機関とのやり取りや必要な手続きを一括でサポートいたします。
相続登記や抵当権の変更でお困りの方は、ぜひご相談ください。
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