「時効取得」を原因に農地の所有権移転を完了しました。
2025.01.07
先日、以下のようなご相談が寄せられました。
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経緯:
- 相談者の亡父が所有していた農地(畑)は、口頭で相続人間の遺産分割協議が整っていましたが、相談者が遠方に住んでいたため、近くに住む姉が相続する旨の遺産分割協議書を作成。
- 名義は姉に変更されましたが、実際には相談者が農地を利用し続け、長期間りんご栽培を行っていました。
- 姉が亡くなり、姉の相続人もこの経緯を認め、相談者名義への変更に協力する意向を示していました。
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問題:
- 贈与を原因とした仮登記を行ったものの、農地法の許可が下りず仮登記のままとなっていました。
- 実際の農地利用が継続しているにもかかわらず、所有権移転手続きが進まず、高齢の相談者は早期の解決を望んでいました。
- 他事務所の対応:
- 以前から付き合いのあった他事務所で相談したけど、対応が難しいと断られた。
- ふくおか司法書士法人での解決を期待し、相談に至ったとのこと。
ふくおか司法書士法人では、農地法および時効取得に関する知識をもとに、以下のプロセスで問題を解決しました。
- 時効取得の適用検討:
- 農地の時効取得に必要な条件(民法162条)を検討。
- 所有の意思を持った占有: 口頭で相談者が相続することの協議が整っていたため、自身が相続したと思い込み占有を開始
- 平穏かつ公然の占有: 長期間りんご栽培を行っている
- 占有期間: 遺産分割協議が成立し、占有を開始してから20年以上経過している。
- 農地の時効取得に必要な条件(民法162条)を検討。
- 時効取得の法的根拠:
- 農地法の許可を要する場合、善意無過失であれば10年の占有で足りますが、本件では許可要件を満たさないため、20年の占有期間を要することを確認。
- 実態が明確であることから、時効取得の要件を満たしていると判断しました。
- 登記原因証明情報の作成:
- これまでの遺産分割協議、相続登記、仮登記の経緯を整理。
- 相談者の長年の占有状況や農地利用実態を詳細に記載した登記原因証明情報を作成。
- 登記申請:
- 時効取得を原因とした所有権移転登記を申請。
- 農業委員会へ通知を行い、実情調査を経て問題なく登記が完了。
農地法と時効取得の関係
農地の移転には原則として農地法の許可が必要ですが、「時効取得」を原因とする場合は以下の通りです。
- 農地法許可不要:
- 時効取得は、長期間の占有を基に所有権が成立するため、新たな権利発生を規制する農地法の許可が不要。
- 登記申請時に農地法許可書を添付せずとも進行可能。
- 注意点:
- 登記官は申請内容を農業委員会に通知。
- 農業委員会による実情調査で要件未達が確認された場合、申請取り下げや登記抹消の可能性あり。
結果
- 登記原因証明情報の正確な作成により、農地の時効取得が認められ、所有権移転登記が無事完了。
- 農業委員会や相続人の協力も得られたため、迅速な解決に至りました。
まとめ
本件の解決は、以下の点で重要な示唆を与えます。
- 専門的知識の活用:
- 農地法や時効取得に関する理解と経験が問題解決の鍵。
- 個別事情に応じた対応:
- 他事務所で断られた案件でも、実態を正確に整理することで解決の可能性が開ける。
- 高齢の相談者が安心して農地の所有権を取得できるよう、迅速かつ適切な対応が重要。
ふくおか司法書士法人では、複雑な農地の所有権移転や時効取得に関する問題についても、確実かつ丁寧にサポートいたします。
どんな困難な状況でも、一緒に解決策を見つけます。お気軽にご相談ください。
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